都立中高一貫校の不登校について(1)

inter-edu.の掲示板に「【7221904】都立中の不登校生」なるスレッドが立ち、議論が白熱wしている。スレ主の投稿は、

  • 不登校の生徒が増えているそうだ。
  • 不登校の生徒が身の回りにもいる。
  • 優秀な生徒のはずなのに何故。
  • 高校に進学できるのか。

といったもので、賛成/反対のそれぞれの立場から、

  • 課題の多さが原因(賛成)。
  • 適性検査の不適切さが原因(賛成)。
  • うちの子は楽しく通っている(反対)。
  • 私立でも増えている(反対)。
  • エビデンスを示せ(双方)。

といった意見が出されている。実際のところどうなのだろうか。議論の中で、エビデンスっぽいものの一つとして、「都立高等学校転学・編入学募集」に関する指摘があり、これに基づいて考えてみた。

このデータは、その名の通り、都立高等学校への転学・編入学の募集に関するものであり、各高等学校別の募集人員が記載されている。募集は、一学期、二学期、三学期の3回行われ、学年別に募集人員が定められている。ただし、第一学年の一学期および第三学年の三学期については募集はないようである。募集には区分があり、

  • 区分1:保護者の転勤等による都外からの一家転住者
  • 区分2:一般

となっていて、区分2が欠員補充に該当するので、区分2の人数を見れば、退学者の数が分かるということらしい。なぜ、高校での退学者から、中学校での不登校が分かるかというと、中学校は義務教育なので、不登校でも進級できるが、高校になった時点で退学となるということのようだ。上記のデータは募集人員のみだが、「都立高等学校転学・編入学募集実施結果」というデータもあり、こちらでは何人入学したかも書かれている。ただ、こちらのデータは、一部の募集に関するものしか公開されていないようであり、利用を断念した。

2017年度の一学期から、2023年度の一学期までの、計19回の募集に関するデータが公開されていた。このデータを用いて、検討を行ってみる。

対象とする中高一貫校は、武蔵、富士、大泉、両国、白鷗の5校で、併設型と呼ばれるタイプである。残りの5校、中等教育学校については募集データが見つからなかった。以下が分かっているファクトである。

  • 中等教育学校については、もともと6年一貫の教育であり、高校(後期課程)での募集は行っていない。
  • 併設型5校についても、現在、高校募集は停止となっている。
  • 募集停止となった時点で、併設型5校の当該学年以降の転学・編入学募集人員が0になっている。

以上から、両タイプを含めた、いわゆる中等一貫校では、転学・編入学を認めていないということだと思われる。理由はよく分からないが、例えば、一般都立からだと、進度が異なるため、必要な単位が取れない(転入学した時点で、必要な授業が終わっている)といったことがあるのかと思われる。高校募集があった時点では、高入生の進度にあったカリキュラムであったのかと思う。もうすぐ分かるが、上記の理解が正しければ、白鷗の二学期の第1学年の募集が0になっているはずである。

比較対象となる、(一貫校ではない)一般都立高校については、進学指導重点校、進学指導特別推進校、進学指導推進校の中から何校か適当に(他意はない)選んだ。それ以外に、上記中高一貫校5校と同じ自治体にある都立高校を追加した。これは、地域性が影響しているかもと考えたためである。

最初、中高一貫校とそうでない高校について単純に平均を取ったが、どう見ても比較対象の都立高校の選択方法が妥当でないのと、明らかに高校の偏差値によって、募集人員に差があるため、偏差値で回帰分析してみた。結果は以下のような感じである。横軸は、高校偏差値、縦軸は1回・学年あたりの募集人員である。学校名は一応伏せた。

一般都立高校の偏差値は、「みんなの高校」2023年度版による。中高一貫校については、偏差値がなかった(募集停止のためか)ため、以下のロジックで大体の偏差値を付けてみた。

  • 中受の偏差値で同等かつ、高入ありの私立高校を見つける。
  • 当該私立高校の偏差値を「みんなの高校」で取得し、採用。

募集人員は、学校によって生徒数に違いがあるため、「生徒数100人あたり」で正規化している。

偏差値が50未満の学校(特に左上の2校)は、定員割れ等の理由で高くなっていると思われ、除外して考えた方が良さそうである。偏差値50以上の学校に関しては、明らかに中高一貫校と一般都立高校で傾向が異なる。一般都立高校(偏差値50以上の範囲で、オレンジ色の線の下)は、募集人員は少なめで、偏差値が高いほど募集人員が少なくなる。中高一貫校(偏差値70以上の範囲で、オレンジ色の線の上)は、同程度の偏差値の一般都立高校を比較すると、明らかに募集人員が多い。中高一貫校の偏差値が少し高めに見積もられている気がするので、残差はもう少し小さくなるかもしれないとか、細かい突っ込みどころは沢山あるが。「高入ありの併設型中高一貫校の高校での退学者は一般の都立高校より多い」ということは言えそうである。

ただ、高入生の退学者が多いのか、それとも中入生の退学者が多いのか。内訳が分からないので、これ以上は何とも言えない。中入生の割合が高いのであれば、inter-edu.の投稿はある程度正しいことになるし、高入生の割合が高いのであれば、入ってしまった高入生は随分気の毒なことだと思わざるを得ない。一般都立に比べ、退学する可能性が数倍高い学校に入ってしまったのだから。高校募集停止は、「併設型中高一貫教育校における6年間一貫した教育をより一層推進する」ためだそうだが、理由はこの辺にもあるのかなと思った。

どうだろうか、理路に問題があれば、ご指摘頂けると幸いである。

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