都立中高一貫校の不登校について(3)
個別の学校について見てみる。
併設型一貫校5校と、一般都立高校として、日比谷、西、国立、戸山、八王子東、立川とを比較する。学校単位だと、2014年度の第三学年等、3年間の追跡ができないデータが影響する可能性が高いため、2017年度から2020年度に入学した学生について集計した結果を対象とした。結果は以下の通り。学校名は伏せた。
前のグラフと同様に、第一学年の二学期から、第三学年の二学期までの期間の、生徒100人あたりの募集数を示している。一貫校と都立一般では、明らかに差があり、一貫校は募集数が多い。都立一般は、募集数の多寡はあるものの、概ね傾向は類似している。一方、一貫校は、第三学年の二学期の時点で募集数が多い一貫_1、一貫_3、一貫_4と、相対的に募集数が少なめの一貫_0、一貫_2の2グループに分かれる。また、前者はさらに、第一学年の二学期の募集数が多い一貫_4と、募集数が少ない一貫_1、一貫_3とに分かれる。
一貫_4は、第一学年の二学期の募集数がダントツに多い。これは、中学校の時点で問題があることを示唆していると思われる。一貫_1、一貫_3は、第一学年の二学期の募集数は少ないものの、「様子見」しておらず、すぐに募集数が増加している。これも、中学校の時点での問題が影響しているのではないかと思われる。一方、一貫_0、一貫_2は、第一学年の期間は募集数が少なく、その後、増加を始める点で、都立一般と似通っている。これは、高入生を多く含むのではと考えられる。全体での募集数が一貫校内では相対的に少ないこともあり、この2校はあまり中学校時点での問題がないのではと思われる。
2点ほど注意すべき点にふれておく。1点目は、一貫校における高校進学時の辞退についてである。普通に考えると、高校進学時の辞退者が多い場合には、高入生の募集を増やすのではないかと考えられる。そうであれば、第一学年の一学期の募集は、高校進学時の辞退者によるものは含まないと思われるが、この辺の制度について把握しきれていない。高校進学時の辞退者は、より上位の学校へのチャレンジといったポジティブな要因によるものも含まれると思うので、進学辞退者の影響を把握する必要がある。
2点目は、合格者の扱いについてである。先に、応募者数と比べ、合格者数は非常に少ないため、応募者数は退学者数の累積に近いと思うと述べた。これは、マクロに見る場合には概ね正しいが、学校別のようなミクロな分析では影響がある。例えば、一貫_2の第二学年二学期から三学期では、応募者数が減少しているが、これは合格者がいたことによる。退学者と合格者の差分しか観測できないため、個々の学校の分析については、より慎重さが必要である。「実施結果」のデータがあれば、より正確な分析が可能であるため、もう少し探してみたい。